オーガニック先進国といえば、まずどの国を思い浮かべますか。
オーガニックの概念が国民に浸透していて、商品や農作物が通常のスーパーマーケットでも気軽に手に入るようなイメージでしょうか。
それを考えると、いや考えなくても残念ながら日本はまだまだオーガニック後進国と言えそう。
その違いはどういったところにあるのでしょうか。
今回はオーストラリア、ドイツ、アメリカについて、取り組みや国民の意識などに焦点を当ててご紹介します。
有機農業面積世界一!「オーストラリア」
美容品やアロマブランドなど、オーガニック商品が多い印象を持つ人も多いかもしれません。
何より2020年発表のオーガニック統計データによると、有機農業取組面積が3,570万ヘクタールと世界一のオーストラリア。
日本と比べると確かに土地は広いですが、それだけ大きな面積を有機農業に費やしているのは、そこにニーズ(消費者)があるからとも言えます。
オーストラリアのオーガニックに対する取り組みや意識は、どのようなものでしょうか。
ナチュラル志向な国民気質
オーストラリアではオーガニックやウェルネスという言葉は国民的に根付いていて、シドニーやメルボルンなどの大都市だけでなく、ケアンズのような地方でもオーガニックショップが町のなかにいくつもあります。
カフェでもプラントベース(植物性素材を使ったもののみを扱う)カフェや、オーガニックカフェもそこら中にあり、人々の意識の高さが伺えます。
また自然素材に特化したコスメブランドも多く、南オーストラリア発の「Jurlique(ジュリーク)」、メルボルン創業の「aesop(イソップ)」、ファーマシー(薬局)で気楽に買える「Skin(スキン)」など日本でも人気のブランドもいくつも。
いずれも品質には厳しくこだわりがあり、値段はそれなりにするものもありますが、目的を持って使うならその価値はあると思いますよ。
またこちらは私の感覚ですが、オーストラリア人は口にするものひとつにしても、「どこのもの」であるとか「どのように処理されている」のだとか気にする人も多く、カフェやレストランでも自分の食べ方やコーヒー一杯の飲み方などにこだわりがあります。
こういった自分なりの軸を持っている人が多いことと、オーストラリアのオーガニック文化が拡大し続けていることも、個人的には何か繋がりがありそうだと感じています。
オーガニック見本市「Naturally Good Expo」
南半球最大のオーガニックエキスポ「Naturally Good Ecpo」は、オーガニックをもっとよく知りたい人とサプライヤー(生産者など提供側)を繋ぐウェルネスイベント。
自然食品から飲み物、生活用品、シャンプーリンス・石鹸などのパーソナルケアの小売業、また薬局やスーパーマーケット、カフェやレストラン、ホテルなどの飲食業や企業、ナチュロパスや栄養士、鍼灸師などの施術者に至るまでがナチュラルライフに関わる幅広く対象です。
2020年は新型コロナウィルスのソーシャルディスタンスなどへの対応から、やむを得ずキャンセルとなったそうですが、2019年には360を超える出展者と約6000人のバイヤーが集まったそう。
最近では、バイヤーはオーストラリア国外からも多く訪れたそうですが、今年はやはり厳しいでしょうね。
オーガニックやウェルネスに興味がある人にとっては、まさに夢のような空間!学びや発見の機会になること間違いなしですね。オーストラリア在住の方が羨ましいー!
2021年はコロナ対応を万全にして、5/30~5/31の2日間開催予定ですよ。
参考資料:「Naturally Good Expo – Sydney」「Naturally Good Expo」公式(英語)
厳しいオーガニック認証「ACO」
オーストラリアの認証システムは、「ACO(Australia Certified Organic)」。
2002年に設立されたオーストラリア最大のオーガニック認証団体で、1998年に設立された認証機関「BFA(Biological Farmers of Australia Cooperative Ltd)」が元となっています。
- 95%以上が認定されたオーガニック原料
- 残り5%も基準に沿った天然由来成分
- 動物試験(実験)なし
- 合成化学物質(合成着色料、合成香料、化学品由来防腐剤)、合成肥料、遺伝子組み換え作物を使用していない
- 基準に準じた加工方法
などの厳しい基準があり、これらは3年ごとに見直されるのだとか。しかも抜き打ち検査とレポート提出は毎年あり、引き続き基準を満たしているかを細かくチェックされます。
高水準のオーガニック大国「ドイツ」
ドイツはオーガニック業界のあらゆる面でトップクラスを誇る、オーガニック先進国のひとつ。
以前ご紹介した、オーガニック統計データ(2020年版オーガニック統計データ)でも、経済活動の規模を意味する「有機市場規模」のデータではアメリカに次ぎ2位、「有機農地面積」は10位(日本は91位)と大健闘。農地面積は、確かに各国のサイズ感も左右しますが、それにしても日本との順位の違いにその差を感じずにはいられませんね。
オーガニック認証団体のレベルの高さ
ドイツがオーガニック先進国と認められている理由のひとつに、世界最高峰有機農業ともされる「バイオダイナミック有機農法」を推奨(指導)をする、ドイツ認証団体「Demeter(デメター)」があります。
ちなみに「Demeter(デメター)」では、バイオダイナミック農法により生産された農作物、厳しい基準に則して加工された製品にのみ、認証マークが付けられます。
その厳しさより信頼は厚く、欧米ではデメター品質は一種のステータスとも言われるほど。
ほかにも世界のオーガニックコットンを認証する国際基準「GOTZ(ゴッツ)」など、世界中で知られる民間オーガニック認証団体の多くはドイツ出身かドイツに本部があることでも、いかに国を挙げてオーガニックを取り入れているかがわかりますよね。
参考資料:「デメター/オーガニック認証」
政府による手厚い「財政支援」
ドイツが今まさにオーガニック大国として勢いを増しているのは、2018年より施行されたオーガニック農業支援プログラム「未来戦略 オーガニック農業(Zukunftsstrategie ökologischer Landbau (略称ZÖL)」によることも大きいでしょう。
約10年という期間、年間にして20万ヘクタールの農地がオーガニックへ転換されることになるのだとか。資金は現在の2,000万ユーロ(約24億円)から3,000万ユーロ(約36億円)へ増額されるそうですよ。
このおかげで、農家さんも安心して有機農業に従事できるのですね。
国民のオーガニックに対する意識
たびたび指摘されることですが、オーガニックに対する考え方や意識が日本のそれとはずいぶんと異なります。
日本でオーガニックを買う人は「自分や家族のため」「美味しいから」「安心だから」などと自分や身近な人のメリットのための理由が多いそうです。
一方ドイツでは、「健康のため」という答えもありますが、ある世論調査では「地元農家の支援のため」「環境や人体に害が少ないから」「動物愛護」「持続可能な社会のため」など、環境問題や社会へ目を向けた理由が多い傾向にあります。
もちろん「だから日本が劣っている」と言いたいわけではなく、やはり大きいムーブメント(流れ・動き)を起こすには、もっと広い視野で現状を捉えることが近道なのかと個人的に感じました。
世界をリードするオーガニック先進国「アメリカ」
ハンバーガーやステーキ、着色料にクリームたっぷりのあまーいスイーツなど、オーガニックのイメージとはかけ離れているように思われるかもしれませんが、実は今やアメリカは世界をリードするオーガニック大国なのです。
既出のオーガニック統計データ(2020年版オーガニック統計データ)でも、経済活動の規模を意味する「有機市場規模」でアメリカは第1位!
数字としては世界の967億ユーロに対し、ほぼ半分の406億ユーロがアメリカなのです。
しかもこの市場はここ10~20年ほどで作り上げたものだというから、その変化のスピードには驚きますね。
大手のオーガニック専門スーパーが
アメリカのオーガニックラバーだけではなく、全米で多くの人に親しまれている大手のスーパーに「Whole Foods Market(ホール フーズ マーケット)」「Trader’s Joe(トレーダーズ ジョー)」があります。
自社ブランドものもあり、体にいいものがお手軽価格で購入できるとあり、日本からの旅行者のお土産としても人気のスーパーなので知っている人も多いかもしれません。
もちろんローカルにも大人気で、以前NYで「Whole Foods Market」を訪れた際には、6~7つほどのレジが空いているにも関わらず全て長蛇の列!アメリカ人がここまで並ぶ(失礼!汗)ことに感銘を受け、そこまでしてオーガニック商品を買い求める時代なのだと痛感したものです。
その「Whole Foods Market」はかなり大きくて野菜や果物、肉やチーズ、ワイン、ベーカリーとそれぞれにコーナーがあり、フレッシュな野菜を使った豊富なデリが楽しめるイートインコーナーも併設。
あっという間に一日過ごせそうな、見どころ満載のスーパーマーケット!日本に上陸する日が来るのを密かに楽しみにしています。
アメリカのオーガニック認証「USDA」
農務省傘下の「全米オーガニックプログラム(NOP:National Organic Program)」という制度で定められているオーガニック認証が「USDA」。
このNOPでは、オーガニックの定義を下記のようにしています。
「オーガニックとは、認可された手法で生産された食品、あるいはその他農業製品のことを指す、表示用の用語である。その手法とは、資源の循環を育み、生態系のバランスを整え、生物多様性を保護することが可能な、文化、生物、機械を使用して行う農法を取り入れたものである。合成肥料や下水汚泥、放射線照射、遺伝子操作は使用してはならない。」
英語原文:「NOPウェブサイト」
また、表示にはいくつか基準が設けられていて方法は下記の3種類があります。
- 100 percent organic:100%オーガニック表示・マーク貼付OK
- Organic:オーガニック原料が95%以上の商品はオーガニック表示・マーク貼付OK
- Made with Organic:オーガニック原料が70%以上の商品はオーガニック原料表示
この「USDA」認証マークは、日本でも輸入食品などを扱うお店で比較的よく目にするもののひとつなので馴染があるかもしれませんね。
参考資料:「USDA/オーガニック認証マーク【アメリカ】」
最後に
オーガニック大国、先進国と呼ばれる国々について掘り下げてみました。
それぞれの国の取り組みや国民の特性なども大きく関わって、オーガニック文化が根付いてきたのだと思うと興味深いですよね。
日本でも各国を見習いながら、でも日本の良さもしっかりと生かしつつ、「オーガニック」が少なくとも選択肢のひとつとして、気軽に手に入るものになればと願っています。
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